マヨラーとの対決

はどんな料理にも調味料をかけ過ぎる傾向がある。特に七味はいつもカバンにまで忍ばせていて、なんにでもパッパとかける。これは、カプサイシン・ダイエットの効果も期待できる。
 麺類や味噌汁はあたりまえだが、納豆、おしんこ、炒め物にもかけてしまう。 まあ、味覚が正常かと言えば怪しい面もあることは認めている。

味はその分量からは大したことにはならない。山盛りかけるならともかく、料理を台無しにしたりはしない。それでも、料理人からは見えないようにかけたりする礼儀は必要だ。ほぼ完成に近い形で出したと思っているものに、いきなり七味を振られたんでは、面子もなにもない。いきなり振り掛けてもいいのは、ラーメンのコショウと、とんかつのソースくらいのものだ。これはもともとの好みだからどうしようもない。わが事務所のM君は、とんかつのソースさえ慎重だ。「まず、味をみてからです。その後なにをどのくらい振り掛けるか決めます。」なんて一丁前のことを言う。きっと、奥さんの影響に違いない。この間、黙って横からとんかつにソースをたっぷりとかけてやったら、すごく怒っていた。まあ、主義主張もこのくらい徹底すればいいだろう。

日得意先の赤星氏(仮名)と食事をした。久しぶりに奥さん(”yuri”だったかな)も同席した。この男ほど、奥さんの影響を受けない人はめずらしい。新婚なのに。なにが許せないかといえば、驚異的な「マヨラー」なのである。まさかという場面でマヨネーズが登場する。この日は、焼き鳥である。私がこよなく愛する焼き鳥に、七味を振り掛けているのを横目でみながら、店員にマヨネーズを注文したのである。店員も店員なのであるが、小皿にのせたマヨネーズを持ってきた。これに「ハラミ」だとか「ハツ」をベトッとつけながら食べている。しかも、マヨネーズのおかわりだ。次の出し巻き玉子にもつけている。オムレツとかいう西洋料理ならともかく、和風だしの玉子料理にマヨネーズが合うわけがない。彼は東北を中心とした地方料理のオーソリティーを自称している。いちご煮や、しょっつる鍋もマヨネーズで食べるのだろうか。

の言葉を信じるなら、ほかほかご飯でも、納豆でもマヨネーズをかけるとのことである。ここで対決を試みることにした。次の注文料理は、「せいろそば」だ。七味ならどんとこいだが、マヨネーズで「そば」はないだろう。私は勝ち誇った顔で彼の手元を見た。すると彼は、なんのためらいもなく、「そば」の端っこにマヨネーズをつけた。うわー。