カレーライスをつくろう
「カレーライス好きですか」と聞けば、多くの方が好きだと答える。最近は私の幼少のころのカレーはこんなだったかなと考えることがある。第一にカレーとは、もっと黄色が強いものだったし、現在のようにバラエティーはなかった。しかし、あのカレーが好きだった。あのカレーとは、市販のカレールーを使わないことが原則となる。まずは玉ねぎを炒める。焦がさないで、しかもきつね色になるまで炒めるには相当な時間がかかる。次にカレー粉と小麦粉を木のしゃもじで炒める。しゃもじは絶対に木でなければならない。ここにだし汁を加えて、ようやくカレールーが完成する。だし汁は、多くの場合は「かつお」だった。日本そば屋のカレーライスのイメージに近いだろうか。
ここは、本来手を抜いてはいけないところだ。しかし、市販のカレールーはコンソメだったりするから、もうそれだけで別の食べ物になってしまうのだ。玉ねぎの工程も省かないでほしい。どうしても市販のカレールーを使用するときであっても、玉ねぎを炒めたものをベースにすることで、かなり理想に近いものが期待できる。カレーのとろみとほんのりとした甘みは、玉ねぎから生まれるものなのだ。
それから、じゃがいもは入れないでほしい。カレーの絶妙なスパイスを全部じゃがいもが吸ってしまって台無しになる。カレーが余ったら後日カレーうどんや、カレーのパスタなどにするのも乙な味わいだが、夏季は、じゃがいもが腐る恐れがある。
肉はなんでもよろしいが、牛よりは豚が合うと思っている。カレー発祥の地であるインドでは、カレーに神聖な牛なんか入れるはずがない。鳥肉もおいしいが、骨の扱いがやっかいである。私はシーフードカレーは苦手だ。単に海老やほたて貝が好きでないだけだけど。
こうして、手間をかけたカレーが完成する。最後に食べる直前にウスターソースをかける。驚く人もいるが、昔は当たり前のようにソースをかけていた。ああ、どうかカレーにソースをかけるのだけは認めてほしい。これができないとなると、カレーライスをつくる興味は半減するのだ。かと言って名古屋地区のように生たまごを乗せたりするのは、もちろん邪道だ。カレーに乗せていいのは、トンカツかコロッケと決まっている。この場合にも揚げ物の衣がカレーを吸収してしまうので、カレーは多めにかけることを忘れてはならない。