子供の味覚
コロッケというものが大好きです。レストランの「かにクリームコロッケ」もいいのですが、なんたってお肉屋さんのコロッケが一番です。大量の高温のラードで一気に揚げる。とんかつソースを多目にたらしてアツアツの揚げたてを食べるときの至福感は例えようがありません。
晩飯のおかずにコロッケが出たらもう最高でした。母親に心から感謝です。弁当にもいいですね。材料はほとんどがジャガイモなのでしょうが、なぜかご飯に合うのです。ソースはあくまでも多目にかけなければなりません。
父親はときどき同じ肉屋の「メンチカツ」を食べていました。これが突然気になりまして、母親にダダをこねて買ってもらうことになります。しかし一口食べて「しまった!」と思うのです。全然コロッケの方がおいしかった。これが子供の味覚なのでしょうか。たっぷり入っている玉ねぎも気になるし、メンチカツなんて二度と口にするもんかと思っていたほどです。
父親が連れていってくれるラーメン屋でも似たような事件が起こります。いつもいつもラーメンを食べていて、それは大好物なのだから文句はないのですが、父親がときどき注文する「タンメン」が気になり始めます。
色は上品だし、なんだかいろんなものが入っているし「ラーメンよりもきっと旨いに違いない。だから子供には食べさせないのだろう。」まあ、このあたりの心の動きが非常に幼稚なわけであります。ガキの頃から疑い深い性格だったのかもしれません。
これもついに直談判して、ようやくタンメンをゲットするのです。しかし好きでもないモヤシが大量に乗っていたり、シナチクがなかったり、第一スープの感じがまったく異なるので完食できなかったのです。
ああここからなんと10年間もタンメンを食べないことになるのです。両親を疑ってごめんなさい。きっと子供の味覚に合わせて食品を選んでくれていたのに。たぶん母親が生きていたら「おめえに食わせるタンメンはねえ!」とどなられるに違いないのです。