有期雇用派遣は”個人単位で3年上限まで派遣可能”とする厚労省報告書について

 

平成25年8月20日、厚労省「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」が開かれ、今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書が示されました。

 

労働者派遣制度は、リーマンショック後にクローズアップされた”派遣切り”等の問題を受け、日雇い派遣の原則禁止等規制を強める方向に向かっていました。

しかし、報告書では、実際には日雇派遣に対するイメージに代表されるような低待遇・定型的な業務に従事する労働者のみに注目するのではなく、ワークライフバランスを図るために積極的に派遣という働き方を活用している者や雇用が安定しており高待遇な者も含む多様な層であることも踏まえた、派遣労働市場を全体として捉えた議論が必要とした上で、その在り方について検討がなされています。 

 

報告書には、現行制度の課題を整理し、労働者派遣制度の検討にあたっての基本的な視点について3点挙げられています。

①派遣労働者の保護と雇用の安定を積極的に図ること

②派遣労働者のキャリアアップを推進すること

③労使双方にとってわかりやすい制度とすること

 

これらを踏まえ、今後の制度見直しの方向性について次のように示しています。

(1)登録型派遣・特定労働者派遣の在り方

・登録型派遣は労働力の需給調整の仕組みとして有効に機能しており、仮に禁止した場合、経済活動や雇用への影響が懸念される。

・登録型派遣については、雇用の不安定性への対応が必要。

・特定労働者派遣事業では「常時雇用される」を「期間の定めの無い」ものと再整理する(全ての派遣労働者を無期雇用する派遣元に限定する)ことが妥当。

 

(2)「専門26業務」の規制廃止検討など期間制限の在り方

・専門性は技術革新等により時代とともに変化する。したがって、一定の知識、技術または経験の専門性を判断する基準を明確に定義するのは困難である。

・26業務に該当するか否か、付随的な業務に該当するか否かの判断が難しい。解釈の違いが生じるケースがある。

これらを鑑みても、分かりやすい制度とするためにこの規制の廃止を含めて検討する。

 

【今後の制度イメージ】

(1)個人レベルでの派遣期間の制限

派遣期間の上限をこれまでの業務単位から個人単位にすることで、派遣先で派遣労働者の行う業務を厳しく限定する必要性が少なくなり、職域を広げることにもつながることでキャリアアップの機会が増す。また、付随的な業務の問題が無くなるなど、わかりやすい制度となる。

 

(2)派遣期間の上限に達した者への雇用安定措置

同一の有期雇用派遣労働者が、派遣上限期間に達する場合は、希望を聴取し、派遣先への直接雇用の申し入れ、新たな派遣先の提供、派遣元での無期雇用化などのいずれかの措置を義務付ける。

 

(3)派遣先レベルでの派遣期間の制限

有期雇用派遣の受け入れについて、派遣先の同一業務を単位として上限を設定する。派遣先において受け入れている有期雇用派遣労働者の交替等によって継続的な受入が上限を超す場合には、派遣先の労使のチェックの対象となり、上限年数を超えた継続的受入れ、およびその後一定期間内にける同じ組織・業務単位内での新たな有期雇用派遣労働者の受け入れの可否を決定する仕組みとする。

 

(2)(4)における受入期間の上限については、いずれも「3年」を中心に検討することが考えられる。

 

(ご参考)

・厚労省HP「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 報告書素案

・厚労省HP「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書の取りまとめについて

 

 

 

ARTICLES

関連記事